管理者の役割、組織全体と個人のバランスをとっていくこと

 

POINT

◆ 急激な経営環境が変わった場合に備える唯一の方法は多様性のある組織。

◆ 普段から価値観の違った異端児を組織内においておく。

◆ 管理者の役割、組織全体と個人のバランスをとる。

 

 

急激な経営環境の変化に備える唯一の方法

コロナ禍で「人」「モノ」「カネ」の流れが変わってしまった。この3要素のバランスが完全に壊されてしまった。収入を得るためには従来の仕組みでは稼げない。そのため今までとは違った仕組みをつくらないといけない。その仕組みをつくる時間がきわめて短いのが今回の大きな特徴です。通常の経済活動では急激な経営環境が変わることは日本ではまず起きない。ある程度の時間を経過して起きていくので、準備する時間がある。コロナの最大の問題は準備期間がないことなのです。

 

準備期間がない状態で経営環境が大幅に変わってしまうと、組織は混乱し著しく収益が悪化してしまう原因となる。これに対処する手段は組織に多様性があること。どのような環境に変わっても組織に多様性があれば柔軟に適応できる。いろいろなモノの見方や考え方ができることが適応力がある組織なのです。これに対し画一化された組織はきわめて軟弱で適応力が乏しい組織になってしまう。

 

組織に多様性を持たせることはとても難しい。組織はひとつのまとまりある組織なので、ここに違った価値観の人が入ってくると秩序を乱されてしまう。会社はこれを嫌います。会社にとってもっとも困ることは組織の崩壊です。無秩序の状態は組織を崩壊させる要因なので、これを排除しようとします。排除するれば多様性が失われます。コロナは会社組織を崩壊させるほどの事態です。この事態に対処するためには、普段から価値観の違った異端児であっても組織内に内包しておくことが必要です。これができる会社が最も強い会社なのです。多様性を持った組織づくりをどのようにしてつくり上げていくのか。重要な役割に担っているのが管理者です。

 

 

管理者の役割とは

管理者の役割は何か。命令と禁止で従業員を従わせることではない。その個人の持っている能力や資質を会社と個人に有益に働くように調整することです。強制的に会社の命令に従わせようとすると個人が全体に埋没してしまって個人の能力が発揮できなくなってしまう。一方、あまりにも個人に重きをおくと、個人の利益が最大化してしまい会社の利益が出なくなってしまう。会社全体と個人のバランスをうまくとっていくこと、これが管理者の役割です。

 

 

 

管理者の役割を「囚人のジレンマ」から解説

管理者の役割を「囚人のジレンマ」から解説します。囚人のジレンマは組織と個人の利益を説明するのにとてもわかりやすい。

 

【囚人のジレンマ】※

共同で犯罪を行ったと思われる2人の囚人A・Bを自白させるため、検事はその2人の囚人A・Bに次のような司法取引をもちかけた

 

  • 本来ならお前たちは懲役5年なんだが、もし2人とも黙秘したら、証拠不十分として減刑し、2人とも懲役2年だ。
  • もし片方だけが自白したら、そいつはその場で釈放してやろう(つまり懲役0年)。この場合黙秘してた方は懲役10年だ。
  • ただし、2人とも自白したら、判決どおり2人とも懲役5年だ。

 

このとき、「2人の囚人A・Bはそれぞれ黙秘すべきかそれとも自白すべきか」というのが問題である。なお2人の囚人A・Bは別室に隔離されており、相談することはできない状況に置かれているものとする。

※出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

 

解説)

組織の利益を最大化するには、囚人Aと囚人Bは黙秘することで可能となる。しかし個人の利益を最大化しようと考えると、囚人Aも囚人Bも自白してしまう。だが結果としてお互い自白してしまうので、組織の利益は最大化されなくなってしまう。それどころか、二人の囚人は2年であったものが5年の刑となり個人の利益も最大化されない。

 

管理者はこれを管理します。個人が同じことをしているにもかかわらず、結果が違ってきてしまいます。囚人Aは黙秘すれば2年の刑ですが、相手が自白してしまう可能性があります。そうなると10年の刑になってしまう。そして相手は釈放となる。このようなことが起きないように、管理者は組織と個人の利益が最大化するようにしていきます。これが管理者の役割です。

 

図① 組織の利益最大化

図② 個人の利益最大化

図③ その結果、組織の利益が最大化されなくなってしまう

 

 
図①
組織の利益を最大化するには、囚人Aと囚人Bはともに黙秘する。そうするとお互い2年の刑となる。

 

図②
個人の利益を最大化しようとすると、囚人Aは自白、囚人Bも自白となる。

 

 
図③
しかし囚人Aも囚人Bも自白すると、お互いに5年の刑となってしまう。

 

 

 

まとめ

 

強制的に会社の命令に従わせようとすると、個人の能力が発揮できなくなってしまい組織としての利益も出ない。一方、個人を重視すると個人の利益が最大化してしまい会社の利益が出なくなってしまう。このようなことが起きないように、会社全体と個人のバランスをうまくとっていくことをしていくことが、管理者の役割です。

 

経営環境が激変していくなかで、組織は柔軟な対応ができることが求められる。このような組織にするためには、個人の多様性を受け入れ異端児であっても組織から排除せず利益を出せる組織にしていくこと。これを実現する役割を負っているのが管理者です。