7割以上の社員が新卒の方が高給なら転職する。既存社員の静かな怒りが企業を崩壊させる

 
 

なぜ「新入社員の給与」だけが高くなるのか。
不公平感を感じる既存社員。
私たちの将来の給料は、これからどうなっていくのか。
その背景にあるものは。
離職ドミノは、もうそこまで来ている。

苦労して獲得した新卒1人を喜ばせる裏で、即戦力で活躍している中堅社員が辞めていく。
最悪のシナリオが現実のものとなる日は、いつなのか。
ガラスにひびが入るように従業員の不満が徐々に広がり、
気づけば取り返しのつかない状態になっていく。
 
 

「7割以上の会社員が『新卒のほうが高給なら転職を検討する』」という数字が、話題となっています。この数字は、パーソルキャリアの調査機関「Job総研」が実施した「2026年 新卒の給与に関する意識調査」の結果である。
 
 

【目次】
1.調査の内容と数字の意味
2.給与逆転、なぜここまで「不満」が出るのか
3.高い初任給は、本当に得なのか

 

 

1.調査の内容と数字の意味

 
社会人男女302人を対象に「新卒が自分より高給の場合、転職を検討するか」を聞いたところ
 
「絶対に検討する」・・・・・・・・22.2%
「検討する」・・・・・・・・・・・22.5%
「どちらかといえば検討する」・・・27.5%
 
合計72.2%が「転職を検討する」と回答しています。

また、新卒の方が高給なことに「不公平を感じる」層の合計:87.5%

 
 
「新卒社員よりも自分の給与が低くなると感じた既存社員の約7割が、転職の可能性を意識している」という現状を示しています。

この調査結果は、単に「新卒社員の給与を上げるべきではない」という意味ではありません。むしろ、新卒社員の待遇を改善するのであれば、既存社員の給与や評価制度も併せて見直さなければ、不公平感が高まり、離職につながる可能性があることを示しています。
 
 
 

2.給与逆転、なぜここまで「不満」が出るのか

 

◎ 新卒初任給の引き上げが進められる中で、「入社年数が長い人より、新卒の給与が上がる」という「給与逆転」が進むと、既存社員のやる気にネガティブな影響を与えると感じている人が8割以上にのぼるというデータもあります。
 

◎ 同じ業界や職種で働いていると、「自分より経験が少ない新人が給料上位」だと感じたときに、モチベーションや定着率が下がりやすくなるという懸念が広がっています。
 
 
採用難を背景に「新卒給与を上げざるを得ない」という事情は理解している人が多いが、一方で、4割以上が「新卒に給与が追い抜かれるのは納得できない」と答えており、給与体系の見直しや、年次昇給・キャリア給の仕組み作りの必要性が急務であると言えそうです。
 
 
 

図1 転職後の平均年収は19.2万円増の533.7万円

 

 
  
 
給与は単なる生活費ではない

給与は単なる生活費ではなく、会社からの評価や尊重の表れでもあります。新卒には採用競争のために高い給与を提示する一方、既存社員には十分な説明も賃上げもない場合、社員は「自分たちは後回しにされた」と感じます。問題は金額だけでなく、処遇の透明性と納得感です。この問題は、世代間の嫉妬というより、会社が人をどう評価しているのかという制度上の問題を示している。
 
  
 

3.高い初任給は、本当に得なのか

 
新卒の初任給が高く設定されているのは、将来の活躍を見込んだ「先行投資」と考えれば、一定の合理性があります。いわば、入社後の成果に対する前払いのボーナスのようなものです。初任給が高いからといって、生涯年収が高いというわけではありません。
 
実力や成果がともわなければ、賞与が減ったり、その後の昇給が抑えられたりする可能性があります。長期的に見れば、能力や実績に応じて年収は調整されていくでしょう。優秀な人材を採用競争で確保するためのコストと考えれば、新卒の高い給与にもある程度納得できるかもしれません。
 
しかし、納得のいかない中堅社員・ベテラン社員は会社を去っていくと、企業は負のスパイラルにおちいり崩壊する。特に、人の採用に苦労している中小企業は、その影響は大きい。企業倒産1万件超(2024年)のなか、中小企業に未来はあるのか。
 
 
<中堅社員が離職し始めると、企業には以下のような負の連鎖が起きます>

 
指導力の低下: 新入社員を指導するべき中堅社員がいなくなる。

新卒の定着率低下: 十分な指導が受けられない新入社員も早期に離職する。

評判の悪化: 「人がすぐ辞める会社」として、採用市場での評判が落ちる。

採用の困難化: 優秀な人材が集まらなくなり、さらに初任給を上げざるを得なくなる。

この結果「採用と定着の両方を同時に失う」という、企業にとって最悪の状況に陥る。
 

 
 
なぜ「静かな怒り」になるのか。
給与逆転が危険なのは、不満がすぐに表面化するとは限らない点です。
社員は必ずしも上司に抗議したり、退職届を出したりするわけではありません。
その代わりに、次のことが起きます。
 

・新人を熱心に指導しなくなる。

・業務改善の提案をしなくなる。

・会社への忠誠心が薄れる。

・必要最低限の仕事だけをする。

・転職サイトを見始める。

 

という形で、組織の内部から少しずつ弱っていきます。
静かな崩壊の始まりです。
中堅社員は新人教育、顧客対応、トラブル処理、業務改善などをしています。その社員の給与が新人を下回ると、「教える人ほど損をする」という構造になりかねません。給与逆転を放置することで、中堅社員の不公平感、教育意欲、会社への信頼が少しずつ失われていきます。

 
Harvard Business Review(HBR)の分析※では、新規採用者の給与が既存社員より高い場合、離職する人のうち優秀な社員の割合が通常より高まることが示されています。通常は、退職者の約4人に1人が優秀な社員だが、高給の新規採用者が入社後は、退職者の3人に1人以上が優秀な社員となる、との結果が出ている。

 
※2018〜2023年、米国・カナダ・欧州の約100社、400 万件超の従業員記録を対象
 


 

 
 
初任給は月100万円、不動産の霞ヶ関キャピタル 27年4月新卒から
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC234TP0T20C26A7000000/

 
 
 

2026年4月入社の新卒社員の初任給を前年度から引き上げる企業は67.5%
(調査:帝国データバンク
 

 
 
 

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